土井晩翠の「星と花」を読みました。詩集『天地有情』(1899博文館)に掲載の一篇。
青空文庫で読めます。 →図書カード:天地有情 底本は、『明治文学全集58 土井晩翠、薄田泣菫 浦原有明集』(1967年年筑摩書房)
土井晩翠(どい ばんすい)は、1871年(明治4年)うまれの詩人、英文学者。「荒城の月」に代表そちるような漢詩調の男性的な詩で、女性的な詩の島崎藤村と「藤晩時代」と称されました。1952年(昭和27年)に亡くなっています。
星と花
土井晩翠
同じ「自然」のおん母の
御手にそだちし姉と妹(いも)
み空の花を星といひ
わが世の星を花といふ。
かれとこれとに隔たれど
にほひは同じ星と花
笑みと光りを宵々に
替はすもやさし花と星
されば曙雲白く
御空の花のしぼむとき
見よ白露のひとしづく
わが世の星に涙あり
文語体の詩は独特のリズムがあって音読すると気持ちが良いです。でも、現代の私にとってはやや堅苦しくて、直接に感情が伝わりにくいようにも感じます。
詩人は、空の星と地上の花は、同じ母から生まれれた姉妹だと詠っています。あちらとこちらに遠く離れていても、その香りは同じで、夜ごとに交わすほほえみと輝きはやさしいと。
そして夜明けの雲が白んでくる頃には、空の花は萎んで消えてしまい、その時、地上の花はひとしずく、朝露の涙を流すのです。
星と花という柔らかいイメージを描いているのですが、歯切れ理良いキッパリした雰囲気の詩です。男性の目で星と花を表現するとこうなるのでしょうか。
美しい詩で、状況としてはとてもよくわかるのですけれど、なんだか理屈っぽくて私には共感しにくかったです。
著名な詩人の詩を批判する気はなくて、好みの問題だと思うのですけれどね。