くきはの余生

リタイアしてようやくのんびり暮らせるようになりました。目指すは心豊かな生活。還暦目前で患った病気のこと、日々の暮らしや趣味のことなどを綴っています。

阿部智里・合本八咫烏シリーズ第一部1~3を読んだ感想

阿部智里・著『合本八咫烏シリーズ 第一部』(文春e-book)を電子ブックリーダで読んでいます。第一部6冊分の合本版、1冊目『烏に単衣は似合わない』、2冊目『烏は主を選ばない』、3冊目の『金の烏』を読み終えたところです。

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2冊目までは以前一度読んだことがあるので再読になりますが、当時は面白くて先が早く読みたすぎて流し読みだったせいか、今回再読してみて、当時気づかなかったことがたくさんみつかりました。

 

 このシリーズは、「山内(やまうち)」と呼ばれる八咫烏(やたがらす)一族の世界を描いたファンタジー小説です。普段は人間の姿(人形/ひとがた)で生活していますが、必要に応じて鳥形をとり、烏の姿に変身して飛ぶこともできます。

ただ、身分の高い貴族達は鳥形なることはまれで、深窓のお姫様などは一生変身することなく過ごすこともあるようです。

彼らは金烏(きんう)を擁する宗家を頂点として、東西南北の四家の貴族たちが支配しています。ちょうど、帝を頂点にして貴族達が政治を握っていた日本の平安時代のようなイメージの世界観です。

烏に単衣は似合わない

1冊目烏に単衣は似合わないは、次代の金烏になる「若宮」のお后候補である四家の姫君達が、選抜のために桜花宮に上がるところからはじまります。

最初に読んだ時は、一番最初に登場する姫君がヒロインなのかと思い込んで、ずっとそのつもりで読んでいたのですが、途中からどうもようすが違うなと思いはじめて、最後の最後で「え? ウソ~」と…… こんな終わり方でいいのかと、ちょっと困惑しました。

知ってしまうと面白さが減ってしまうとのでネタばらしはしませんけれど、作者がちゃんと表現しているのに、お話の先を読み急ぎすぎて、気づかずに読み飛ばしていたところがたくさんあったのでした。

ですので、私のようにストーリーだけを追おうとせずに、ゆっくりと物語を楽しんだ方が良いように思います。

烏は主を選ばない

 1冊目の最後で、少々困惑した人も、続けて2冊目烏は主を選ばないを読めば、なるほどと納得できます。

もちろんそれぞれ1冊ずつで読んでも面白いお話ではありますが、もともとは2冊分で一つのお話として書いたものを、後に2つのお話に書き直したものだそうで、1冊目と2冊目は表裏になっているのです。

このお話で登場してくるのは、北家に属する地方貴族の次男坊「雪哉」。彼がどのようにして若君とかかわり、また、この1冊がどのように前作とかかわってくるのかが見所と言えます。

金の烏

3冊目の『金の烏』は前の2作とはガラリと違っています。前作までは物語の世界観の説明や人間関係の紹介という意味あいも強くあったのですが、3冊目からはいよいよ物語が動きます。

また前作までが宮廷絵巻だったのに比して、3作目は庶民が生活する里が舞台。事件は雪哉の住まう北家の領内で起こるのですが解決策を模索して行くなかで、真の金烏と呼ばれる若君の素性に触れる場面もあって、作者が描いた広大なファンタジーワールドの一端を垣間見たような気がしました。

 

読んだことのない人にこの物語の世界観を説明するのはとても難しいのです。

なにか一つについて説明しようとすると、お話の内容も含めてストーリーを語らなくてはならなくなるのでネタバレになってしまいます。

ですから、あまり多くは語らずにおいた方が良いような気もします。ファンタジー好きの人も、そうでない人も、きっとこの世界に引き込まれるのではないかと思います。