桜間中庸の「金魚は青空を食べてふくらみ」を読みました。
青空文庫で読めます。→図書カード:〔金魚は青空を食べてふくらみ〕 底本は『桜間中庸遺稿集』(1936年ボン書房)
桜間中庸(さくらまちゅうよう)は、1911年生まれの詩人。早稲田大学在学中に童謡研究会に所属して、友人とともに「早稲田童謡」を創刊しました。1934年大学在学中に亡くなっています。
○
桜間中庸
金魚は青空を食べてふくらみ
鉢の中で動かなくなる
鳩だか 鉢のガラスにうすい影を走らせる
来たのは花辯( はなびら)か 白い雲の斷片(かけら)
タイトルの「金魚は青空を食べてふくらみ」は、青空文庫に掲載時に便宜上、詩の1行目を取ってつけられたもので、もともとは無題の詩でした。底本のタイトルの部分には「○」が記されているそうです。
この短い詩の中で印象的なのはこの1行目です。「金魚は青空を食べてふくらみ」なんだか理屈抜きで好きです。ぷっくりした可愛い金魚がイメージされて、なぜか頭から離れなくなりました。
ただ、この金魚、金魚鉢の中で動かないのですよね、一瞬死んでしまったのかとも思ったのですが、死んだ金魚ならお腹を上向けて浮かぶと思うので、この詩の印象とは違うように感じます。
鉢の中で動けなくなるほど、金魚が大きく膨らんだというイメージなのかもしれないなと思います。おそらく、実際にそういう状況がおこっているわけではなくて、詩人のイメージの中のできごとなのでしょう。ちょっとユーモラスな感じもしますね。
動かない金魚が入った鉢の外では、鳩? 何かの影がサッと動きます。やって来たのは、花びらか、白い雲の欠片かわかりませんが、静とと動の対比が描かれています。
たった4行の詩の中で、私は色々な想像をしたり、空想したりを楽しみました。この詩人の詩ははじめて読みましたが、波長が合うというかお気に入りの詩人になりそうな予感です。他の詩も読んでみたいと思いました。