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おばさんは電気炬燵で夢をみるのか?

夫が定年目前にリストラ。無給生活に突入したお気楽主婦日記。心豊かに暮らすために詩を読む生活はじめました。

日本がみえない・竹内浩三:戦火の中にあった若者のこころを推し量ってみる

竹内浩三の「日本が見えない」を読みました。

青空文庫で読めます。→図書カード:日本が見えない

底本は『竹内浩三全作品集日本がみえない』(2001年藤原書店)

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竹内浩三は、1921年(大正10年)生まれの詩人。

日大専門部映画科に在学中、友人たちと同人誌「伊勢文学」を発行。大学を繰り上げ卒業後に軍隊に入り、入営中には布団の中にノートを隠してこっそり日記や詩を書いています。1945年(昭和20年)フィリピンで23歳で戦死しました。

 

日本が見えない

 

      竹内浩三

 

この空気

この音

オレは日本に帰ってきた

帰ってきた

オレの日本に帰ってきた

でも

オレには日本が見えない

 

空気がサクレツしていた

軍靴がテントウしていた

その時

オレの目の前で大地がわれた

まっ黒なオレの眼漿(がんしょう)が空間に

とびちった

オレは光素(エーテル)を失って

テントウした

 

日本よ

オレの国よ

オレにはお前がみえない

一体オレは本当に日本に帰ってきているのか

なんにもみえない

オレの日本はなくなった

オレの日本がみえない

大学を卒業してすぐ軍隊に組み込まれた若き詩人が、軍隊生活の中で書いた詩です。

マンガや映画が好きだったそうです。現代の若者たちとちっとも変わらない。今の時代に生まれていたら「ポケモンGO」で遊んだかもしれない、ごく普通の青年でした。

外地から帰ってきたのでしょうか、それとも、休暇で日常に帰ってきたのでしょうか、状況はわかりませんが、詩人の知っているなつかしい日本に帰ってきたはずでした。

ところが、彼が知っていた日本とはまったく別の国に変わっていたのです。

国の方針で、国民はみんな同じ方向を向かされていた時代に、よくこんな詩を残せたなと思います。

日本が戦争に突き進んで行くことで、否応なしに命を賭けることになってしまう若者達。

「お国のため」と言わされたとしても、「国を護る」という使命感を持っていたとしても、目の前に死があることがどれほどの恐怖か想像もつきません。

残された私達にできるのは、戦争の犠牲となった若者の心を知って、わずかでもその痛みを推測してみることかもしれません。

そして、若者が死ではなく「生きる」ことを見つめられる国に、のびのびと夢や希望を実現できるような国を育てて行くことが必要なのだと思います。