おばさんは電気炬燵で夢をみるのか?

夫が定年目前にリストラ。無給生活に突入したお気楽主婦日記。心豊かに暮らすために詩を読む生活はじめました。

詩集Fantasia:誕生・仲津麻子

 10代から20代頃に書いていた詩を記録しておくことにしました。

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 この詩を書いた時のことを良く思い出せないのですが、子宮の中にいた記憶のイメージです。 

 

誕生

          仲津麻子

風がやんだ

樹々は枝をゆするのをやめ

時々すすり泣くような悲鳴をあげてきしんだ

どこからともなく不思議な音が漂ってくる

それは高く澄んで心に染み透り

心地よい旋律となって語りかけてくる

 

私は気を失ったまま

無意識のなかへ呼びかけてくる音をうっとりと聴いていた

 

闇のヴェールを押しわけて

向こうにある源泉を見極めようと手を伸ばす

このまま深い眠りに閉じ込められてしまうのだろうか__

果てしないヴェールを越えるとやすらかな眠りがあるのだ

 

雪が舞いはじめた

はらはらと頬をかすめて落ち

しだいに激しく渦巻いた

それは広がったり集まったり不規則に形をかえて

やがてひとかたまりの雲となり

ふんわりと闇に浮かんだ

__我が子よ

雲の中から声が響いた

 

声は耳元をくすぐるようにかたりかけた

暖かいものがそっと触れていくと

芳しい香気がたちのぼる

私は赤子のように不思議な声に身をまかせている

 

__起きなさい

声は穏やかに命令した

すると雲が弾け

火柱が噴き

突風が吹きつけて

私は闇のひずみに放り出される

砕け散る波

焼きつくす炎

荒れ狂う海

交錯し混ぜ合わされて回転する

 

星が見える

眩い光が洩れている

まわりながらゆっくりと私は吸い寄せられてゆく

笑い声がする

私を待ち望む祈りが聞こえてくる

私はしずかに手を伸ばし

喜びの中に扉を開ける

        (C)Asako Nakatsu